いざってときにも“使える”美味しい名店
冬の名残がしっかり残りつつ、日差しが少しだけ柔らかくなるこの時期は、食べ物がとてもおいしい。寒さで旨味が締まり、温かい料理はより深く、旬の食材は甘さや香りを増す。そんな季節に「これは人に勧めたい」と思った料理を、ここにしっかり記録しておく。
今回は、都内とその近郊で訪れた 3つの店 を紹介する。
どれも気取らない価格帯ながら、料理の完成度が高く、季節感が際立っていた。
1.炭焼きと旬菜「くろみね」
(東京・三鷹 / 和食・炭焼き)
三鷹駅南口から徒歩7分。路地裏の奥にひっそりと灯る行燈が目印の炭焼き居酒屋「くろみね」。店内はこぢんまりとしているが、炭の香りが心地よく、席数が少ないため落ち着いた雰囲気がある。
◆注文したメニュー
- 寒鰤の炭焼きポン酢おろし
- 芹と舞茸の香味おひたし
- 白子の茶碗蒸し
- 焼きおにぎりの出汁茶漬け
◆寒鰤の炭焼き:脂のキレと香ばしさが共存する主役級
この店の名物と言っていい。
皮目を炭でパリッと焼き上げ、余計な脂を落としつつ旨味だけが残るタイプ。
箸を入れるとじんわりと脂が染み出すが、重くはなく、むしろスッと溶けていく。
炭の香り × 鰤の旨味 × おろしポン酢のキレ
この三角形が完成している。
噛むほどに甘みが広がり、なのに後味は驚くほど軽い。冬の鰤はこうでないといけない。
◆白子の茶碗蒸し:暴力的に濃厚、でも上品
茶碗蒸しの中からトロリと出てくる白子。しかも一つではなく、二つ入っていた。
出汁はやや濃いめで、白子のクリーミーさと合わさると、思わずため息が出るレベルの旨さになる。
熱すると白子の風味は強くなるが、えぐみはまったくない。
口の中で溶ける直前にふわりと香りが立ち、余韻が心地よく残る。
◆焼きおにぎりの出汁茶漬け:締めとして完璧
表面は香ばしく、中はふっくら。
そこに熱い出汁をかけると、香ばしさがふわっと立ちのぼる。
出汁は鰹よりも昆布の存在感が強く、角のない優しい塩味。
胃が完全に落ち着いていくのが分かる。
2.季節の洋食食堂「ルフェーブル」
(東京・神田 / 洋食)
じんわりとした灯りと古い木の質感が心地よい、どこか懐かしい洋食店。
いわゆる“大衆洋食”を丁寧に仕上げるタイプで、セットメニューも豊富。
この日は、店の人気メニューを中心に注文。
◆注文したメニュー
- 牛すじの赤ワイン煮込み
- 牡蠣グラタン
- 自家製パン(おかわり自由)
◆牛すじの赤ワイン煮込み:とろける柔らかさと深いコク
スプーンを入れただけでほどけるほど柔らかい。
赤ワインの酸味は丸く、トマトの甘みが馴染んでいて、驚くほどバランスがいい。
煮込み系料理は濃すぎると途中で飽きてしまうが、これは違う。
一口ごとに味が新しく感じられるほど、丁寧な仕込みが伝わる。
特に良いのは、香味野菜が煮溶けて旨味だけが残っている点。
スープをパンに浸して食べると最高。
◆牡蠣グラタン:冬のご褒美のような濃厚さ
この店のグラタンは、とにかく牡蠣が大きい。
火入れが絶妙で、縮まずプリッとした食感が残っている。
ホワイトソースはミルクの香りがしっかり出ているタイプで、
とろけるチーズと一緒に口いっぱいに広がる。
牡蠣 × 乳製品の相性を改めて感じさせられる一皿。
器の縁まで熱々で、最後まで温度が落ちないのも好印象だった。
3.手打ち蕎麦と季節小皿「そば坐(ざ)」
(神奈川・川崎 / 蕎麦・和食)
川崎駅から少し離れた住宅街にある、本格手打ち蕎麦の店。
昼は行列ができることもある人気店だが、夜は比較的落ち着いている。
この日は夜の席で季節メニュー中心に注文。
◆注文したメニュー
- せりと鴨の小鍋
- そば味噌
- 手打ちせいろ
- 季節の天ぷら(菜の花・海老・椎茸)
◆せりと鴨の小鍋:香りで食べる一品
鍋が運ばれてきた瞬間、せりの香りがふわっと立つ。
細く切られた鴨は歯触りがよく、噛むと脂がじんわり広がる。
スープは鴨の出汁と醤油のバランスが見事で、飲んでしまいたくなるほど。
せりの苦味と香りがアクセントになり、最後の一滴まで飽きない。
◆天ぷら:菜の花が主役級の存在感
春先の菜の花はほろ苦さが美しく、天ぷらにすると一段と際立つ。
衣は薄く、油が軽く、噛むと中の香りがふわっと広がる。
海老天も火入れが絶妙で、プリッとした食感がそのまま。
「油が軽い店は、それだけで信頼できる」と思う瞬間だった。
◆手打ちせいろ:締めとして完璧すぎる
香りの立ち方、コシ、喉越し。どれをとっても文句なし。
蕎麦つゆは辛すぎず、甘すぎず、引き算の美味しさがある。
鍋を楽しんだあとに食べると、
“蕎麦で締める日本人でよかった”
と感じるレベルの完成度。
■ 季節の移ろいを味わうなら、この時期のグルメは最高
今回紹介した3店は、いずれも奇をてらった豪華さではなく、
“素材の旬を最大限に引き出す技術” が光っていた。
- 冬の旨味を炭で閉じ込めた「くろみね」
- 洋食の王道を丁寧に仕上げる「ルフェーブル」
- 季節の香りをそのまま届ける「そば坐」
どれも「また行きたい」と素直に思えた店だ。
季節が少しずつ変わっていく時期は、食材の味わいも移ろい、
その変化をダイレクトに楽しめるタイミング。
だからこそ、今の季節のグルメは特に魅力的だ。
これからも“また誰かにすすめたくなる店”を見つけたら、しっかり残していきたい。
